ニンゲンメモ

タメになりそうでタメにならない日記

愛憎渦巻くヒゲ脱毛の世界

新型コロナウイルス感染症(通称COVID-19)によって我々は,それまで週2回までなどと無意味な制約が課されていた在宅勤務がエブリデイになる,エブリデイ在宅勤務を勝ち取ることに成功した.エブリデイ在宅勤務などにより在宅している時間は,世間では「おウチ時間」などと呼称されるが,このおウチ時間の増加が人々に文化的な変容を与えたのは言うまでもない.中でも美容は顕著な変化を見せており,昨今のマスク社会において生じたお肌のトラブルを解決するべく,従来では考えられないほど,膨大なおウチ時間がお肌のケアに費やされ,人々の美意識が高まっているのがこの令和の時代なのである.

 

本論では特に男性のヒゲ脱毛問題について取り扱う.ニッポンの戦国時代では武将が武威を誇示するために利用する重要な身体的表現であったヒゲ,明治文明開化以後は文明の象徴・教養のシンボルであったヒゲ,平成初期の無精ヒゲ大流行時代にはベッカムイチローを筆頭とする漢たちのアイデンティティで,当時の世の女性たちをメロメロンにしてきたヒゲ,であったが,なんと令和時代においてはヒゲは忌むべき対象・清潔感の大敵とされ,ジャニーズの三宅健さんが「普通になってきた男のヒゲ脱毛」などと広報活動をしてしまう時代である.これは一体どういうことなのか?我々は今こそ,この究極的な難問であるヒゲ問題に向き合う必要があるだろう.

 

 

背景

男性が「そうだ,ヒゲ脱毛をしよう!」と決意したとき,その先には大きく以下の4通りの選択肢がある:

  1. 医療レーザー脱毛
  2. サロン脱毛(光脱毛)
  3. ニードル脱毛
  4. ご自宅でのケア(家庭用脱毛機など)

細かいことは省略するが簡単に概説すると,医療レーザー脱毛は出力が強いレーザー機器を扱うため,永久脱毛ができるとされている(?)一方で,医師免許のある医師・その監督下にある看護師しか施術を行うことができない.サロン脱毛は安価な施術が実現可能な一方で効果が薄く,何度も通う必要があるとされている.ニードル脱毛は毛穴1本1本に針を刺して毛を抹殺していくスタイルでレーザー脱毛よりさらに効力が高いとされているが,「毛1本あたりいくら」という価格設定がされることが多く,大量のヒゲを携えるヒゲ男爵たちには手痛い出費となることだろう.ご自宅でのケア業界は,皆さんご存知の通り,よくわからない脱毛機器たちがよくわからない形でいくらも転がっていて混沌を成している.

 

令和という時代は,言うならばヒゲ戦国時代である.これら4種のヒゲ脱毛業界は,ヒゲという清潔感の大敵をこの世から抹殺するべく,本来であれば互いに協力をするべきところだが,現実にはそうではない.医療脱毛業者たちはサロン業界に対して「脱毛効果が弱すぎてお話にならない」とバツ印をつけて自らの優位性を主張し,サロン脱毛業者たちは医療脱毛に対し「レーザー脱毛はとても痛い,でも光脱毛なら全然痛くない!」などとバツ印をつけるのが基本的な戦い方である.互いが互いを蹴落とし,歪み合い,憎しみ合う.世界から争いは無くならない

 

4つの大国が互いに歪み合っている一方で,各々の大国に位置づけられる小国たちの間にも,実は争いが生じている.例えば,医療レーザー脱毛と位置付けられるヒゲクリニックたちはどうだろうか.大手Sクリニックは価格が安いことに強みがあるが,その一方でレーザー機器の選択ができないという弱みがあった.これはヒゲ初心者が軽視しがちなことであるが,ヒゲレーザー機器の性質はヒゲ脱毛効果に直結するので,ヒゲレーザー機器の選択が認められないというのはなかなか手痛い弱点である.この背景には,(i) ヒゲ顧客を効率的にさばき収益大を狙う (ii) Sクリニックオリジナルとしてブランディングを図ろうと大量に導入したレーザー機器が,実は思いのほか人気が出なかった などの理由があるとされているが,その詳細は定かではない.この弱みに目をつけた他クリニックたちは,脱毛価格は多少高めに設定するも,ヒゲレーザー機器の選択が可能というところで大手Sクリニックに戦いを挑む.中でもGクリニックは,ヒゲレーザー選択の自由に加え,「7回目以降は1回100円で3年間脱毛し放題」というプランで差別化を図り,多くのヒゲ男爵たちの心を射止めることに成功した.

 

医療レーザー脱毛は美容整形という位置づけになり,保険医療と違って自由な価格設定が可能である.よってこれは完全にビジネスの世界である.ナンバーワンホスト・ローランド様が脱毛サロンを経営するビジネスメェンになってしまう時代である.資本主義の歯車としてヒゲが利用されている.あらゆるSNSのプロモーションで「ウチならヒゲがすぐに脱毛できる!」という広告が流れ,その魅力的な謳い文句にまんまと騙された男たちは,目に涙を浮かべながら俯いている.これが令和という時代である.

こうしたヒゲ資本主義により,インターネッツ上には,多くのゴミのようなアフィブログたちや脱毛ユウチュウバーが転がることになる.おびだたしい数のヒゲサイトたちに記載された情報は,その多くがヒゲ業者たちからの献金で成立しており(?),ヒゲ初心者たちはもはや何を道標にして明日を歩めばよいかわからない

 

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考察

そういうわけで何がなんだかわからなくなったヒゲ初心者であるわたしは,結局大手Sクリニックで医療レーザー脱毛をするという選択をした.これは,(i) 医療レーザー脱毛であること (ii) ヒゲ量が少ないと仮定したときに期待されるヒゲ費用が安いこと の大きく2つの理由で選択した.前述の通り,ヒゲ量が多い場合は,例えばGクリニックなどの何回通っても何円!みたいな料金体系が良さそうだが,実際のところ自分のヒゲ量が多いのか少ないのかがわからなかった.というのもヒゲ量を絶対的に測る定量的な尺度が存在しない*1からである.そういうワケで,まずは自分の周囲に居る,ヒゲに悩むヒゲ男性たちの話を聞いて相対的な判断を下すことにしたが,彼らの悩みというのはこうである:

  • 朝処理したヒゲが夕方にはニョキニョキと生えてくる
  • 電動ヒゲ剃りでは深くまで剃れないので毎回カミソリで剃っている
  • その際,ヒゲが頬全体にまで生えるため,顔面の非常に広い領域に対してカミソリを走らせる必要がある

特に最後のヒゲ面積の議論が非常に参考になった.実際,ヒゲ脱毛プランをいくらもサーベイしていると,頬までヒゲ脱毛する広範囲プランと,そうでないプラン(つまり鼻下と顎先だけ)とがあり,自分は頬にヒゲが生えた経験が全くなかったので,自分はヒゲ量が少ないのだろうという判断が妥当であるように感じた.(この結論を得るのに,一体どれだけわたしがインターネッツブラウジングをしたか!貴様にわかるか!?)

 

実験

以下,Sクリニックにて2種類のレーザー機器を比較実験した際の結果について述べる.本実験では,Sクリニックオリジナルの某レーザー機器 と Sクリニックに限らず,あらゆるヒゲクリニックに普及しているジェントルレーズ(アレキサンドライト) の2種類を,各々1回ずつ施術された.いずれのレーザー機器もSクリニックによれば脱毛効果は同じである(量的尺度が存在しないのに効果が同じである is ナニ)ということなので,以下は単なる個人の感想ということになってしまう:

  • 某オリジナルレーザー:じんわりと熱を感じるスタイルで全くといってよいほど痛みなど無かったが,何日経過しても何の脱毛効果も感じることはなかった.いつものように3日くらい経過するとニョキニョキと伸びてくるくらいのヒゲ速度であり,体感としては何の因果効果も無かった.
  • アレキサンドライト:美人看護師が「せぇ〜の!」と言うたびにヒゲレーザーがブシャッと照射されるタイプのアトラクション(新手のメイド喫茶?). よくわからない非日常性が楽しい.本論執筆時点で18日間という月日が経過するが,未だにほとんど毛が生えない.圧倒的エーアイ技術.ちなみにアレキサンドライトという宝石の宝石言葉は「秘めた想い・情熱・高貴」.秘めた想いと情熱が詰まったヒゲレーザーを照射すると,高貴なる者(わたし)には凄まじい効果が現れるということか.

 

 

 

結論

ヒゲ資本主義の前ではヒゲ男性たちは迷える仔羊であり,安息の瞬間など存在しない.今日も誰かが,脱毛効果を実感する幸せを勝ち取ったり,ヒゲ業者に騙されて涙を流している.令和の混沌は止まらない.明日はどっちだ?

 

 

*1:画像認識でヒゲ本数を計測する,ヒゲカウンティングエーアイが求められている